京都市京セラ美術館がリニューアルオープン! 「ガラス・リボン」を纏った建築にも注目を。
1933年(昭和8年)に開館した京都市美術館がリニューアルされ、京都市京セラ美術館となって帰ってきました。洋風の建物の上に和風の屋根を載せた「帝冠様式」とも言われる建物に、「ガラス・リボン」と呼ばれる“帯”をつけた大胆なリノベーションです。
改修設計を担当したのは青木淳と彼の事務所出身で京都府生まれの西澤徹夫。青木さんは〈青森県立美術館〉や、以前紹介した〈杉並区大宮前体育館〉なども設計しています。独特の柔らかい曲線をさりげなく配した建築はご本人のイメージとも一致しています(そんな感じの方なのです)。
「ガラス・リボン」がついているのは建物の正面です。もともとはリボンの上部が地面でした。リノベーションではその地面をなだらかなカーブをつけて掘り込み、中央に向かって緩やかに降りていくようにしています。傾斜がついているので自然と足取りが軽くなり、不思議な感覚とともに中に吸い込まれていく感じがします。
奥へ進むとチケットカウンターなどがあり、そこから新設された階段をのぼっていくと「中央ホール」があります。天井高が16メートルもあるこの大空間はどう見ても体育館なのですが、リニューアル前は「大陳列室」と呼ばれて大型の彫刻などが展示されていました。ですが、体育館に見えたのは私だけではないらしく、戦後にアメリカ駐留軍が接収していた際はバスケットコートとして活用されていたそう。
その両脇にはそれぞれ「光の広間」「天の中庭」と呼ばれるスペースが。ここには見慣れない円筒形の構造物があります。以前は機械室などとして使われており、公開はされていませんでした。「光の広間」のほうは新しくガラスの屋根をかけています。写真だけ見るとロンドンの大英博物館の「グレート・コート」に似ていますが、スケールは違います。
さらに「中央ホール」を奥に進むと増築された新館「東山キューブ」へとつながっています。「東山キューブ」の南側にはもとからあった日本庭園が整備されました。この庭園は美術館利用者以外の人も自由に出入りすることができます。館内にも出入り口や無料エリアが多めにとられており、重厚な見た目とは裏腹に出入りや通過が自由な開かれた建物になりました。
「東山キューブ」で10月4日まで開催される開館記念展「杉本博司 瑠璃の浄土」は、美術館がある岡崎地区にかつて6つの大寺院が存在した史実にもとづくもの。瑠璃はガラスやラピスラズリの群青色を意味し、展示にもガラスを使った作品が並びます。光を構成する色を分解して見せるプリズムなども。私たちが光に何を見て、光は何を見せてくれるのか。そんなことを通じて、仏や菩薩が住む「浄土」を希求する人々の心について考察します。
京都市京セラ美術館は3月に開館する予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため5月26日まで開館が延期されていました。あわせてこけら落としの展覧会「京都の美術 250年の夢」や「杉本博司 瑠璃の浄土」は会期が変更になっています。また、入館は前日までの事前予約制です。
6月から他の美術館も再開館し始めました。久しぶりに見るアートはやっぱりいいものです。新型コロナウイルスの影響は長引きそうですが、実際にアートに触れて楽しむ機会が少しでも増えるよう、手洗いに励もうと思います。
京都市京セラ美術館
※2020年6月18日までは京都府民限定、6月19日以降はすべての観客が入場可能。
※事前予約制
※現在「杉本博司 瑠璃の浄土」展(〜10月4日)、「京都の美術 250年の夢 最初の一歩:コレクションの原点」展(〜9月6日)を開催。その他所蔵品を展示する「コレクションルーム」展、鬼頭健吾の作品を展示している「ザ・トライアングル」展(〜9月6日)などがある。展示、開館時間、休館日、予約方法などは公式サイトを要確認。